過大音量でメニエール病を発症し一旦音楽シーンから離れた後、治療を続けながら演奏活動を再開します。モニター環境はヘッドフォンからShureE4、そしてオーダーイヤチップ、プラスチック製イヤモニからシリコン製イヤモニターへと変遷していきます。
その経験からイヤモニには音の良さと遮音能力がとても重要だと実感していき、演奏のレベルアップと聴覚の保護の両立を実現していきます。
ミュージシャン、エンジニア、イヤモニ製作者の三者は日頃より個々の製品フィードバックや意見交換を欠かすことはありませんが、モニターの全体像について語り合う機会はありませんでした。演奏者とイヤモニ製作者の対談その2です。

大久保敦夫 Atsuo Okubo 【Drummer】
高校在学中よりレコーディングやセッションなどに参加し、現在に至る。 これまでに野口五郎、伊波杏樹、三浦大知、w-inds、チューリップ、MULTI MAX(CHAGE’s Band)、CHAGE&ASKA、永井真理子、Hi-Fi Set、沢田知可子、斉藤和義、国分友里恵、吉岡秀隆、甲斐よしひろ、甲斐バンド、髙橋真梨子、徳永英明、中島みゆき、花*花、古内東子、浜田省吾、長淵剛、KinKi Kids、ENDLICHERI☆ENDLICHERI、中西圭三などのレコーディングやコンサートツアー、小堺一機の『小堺クンのおすましでSHOW』や、ブロードウエイミュージカル『RENT08~09』、大人計画の『30祭2018』『キレイ2019~2020』『シブヤデアイマショウ2021』のステージオーケストラに参加。PAISTE CYMBAL、LERNI STICKのモニターも務めている。

☆ ☆ ☆
大八木哲夫 Tetsuo Oyagi 【Sensaphonics Japan代表】
世界屈指のIEMブランドを牽引するとともに、長淵剛、桑田佳祐、布袋寅泰、椎名林檎、安室奈美恵など、多くの国内アーティストのイヤモニターを製造。米国アーティストではビヨンセやアッシャーなども担当している。2004年に日本にIEMを導入し、国産初めてとなるIEMを製造して以来、現在でも新機種開発を手掛けるイヤモニ・クリエーターである。実は耳型から造るオーダーメイド・イヤホンという概念が日本になかったため“カスタムIEM”という呼称を命名して普及に尽力。この十数年は米国本社と連動しミュージシャンの聴覚保護運動、クラシック演奏家のためのミュージシャンイヤプラグ利用推進にも精力的に取り組んでいる。

☆ ☆ ☆
演奏者がイヤモニに求めているモノとは?選ぶポイント、ここは外せない。

◆ イヤモニを選ぶのが難しい
大八木:イヤモニを使って良い点って?選ぶポイントってなんでしょう?
大久保:みなさんどうやって来たか、イヤモニっていまだに嫌だっていう人もいるので。やっぱり、でも、なんだろうイヤモニの方に舵を切って僕的には良かったことが多いというか。
大八木:時々いらっしゃるのはイヤモニって全部同じだと思ってたりするんですよね。イヤモニって物が多かれ少なかれ同じだろうっていう感覚があって。メーカーによって全然作ってるものが違うんで、それで比較してイヤモニをいい悪いで考えられちゃうとほんとにプロの人にとっては問題で。
全然プロ用のイヤモニじゃないのにそれを使ってイヤモニってこんなもんかって感覚になっちゃうと、「イヤモニじゃだめだな」ってなっちゃうので。それがすごい困るなぁと思ってます。
イヤモニが最初出来た時はプロ用のものしかなかったんですよ。うちが最初にイヤモニを開発した時にはオーディオ用っていうか、一般オーディオファンのためのイヤホンですよね、音楽を楽しむためのオーダーメーイヤモニターみたいなものは存在してなかったので。で、コアなオーディオファンがプロ用のを使ったんですよね。
それが今度イヤモニがある程度プロの中で使われ始めたら、それを使うオーディオマニアも出てきたんですけど、そのオーディオマニア向けにチューニングしたバージョンをイヤモニで売り出したんですよね
大久保:須山さんにもラインナップしてますよね。高級な、桐の箱に入ったような。
大八木:そういうのをやって、それを全部イヤモニって呼んでいるので。イヤモニって元々イン・イヤー・モニターなので、要するに「転がし」(ステージ上のフットスピーカー)を耳にぶち込みましたっていう英語なわけなんですよね。
でも(オーディオ用のは)転がしじゃないんですよね、転がし(モニター)の音が出てるわけじゃないので。結局今のイヤモニっていうのは、プロ用の音なんていうのは忘れられてて、どっちかっていうと今やオーダーメイドイヤホンという意味が「イヤモニ」になっちゃってるんですよね。
イヤモニだと思ってるものが、実はオーダーメイドイヤホンだってことに気が付いてないんで、そこでイヤモニを使ってみるアーティストさんがそれを使っちゃうと、「こんなもんで演奏なんて出来んの?」って話になっちゃって。
大久保さんみたいに研究熱心な方だといろいろ試していただいたりとか工夫してみて、調べてもらえれば違うんだっていうことが分かってくるでしょうけど、最初にダメって思っちゃったら「イヤモニなんて全然ダメ、好きじゃない」っていうね。
イヤモニ自身がすごく広まったのはプロ用から始まってもオーディオマニアにすごく広まった影響が、すそ野が広がったっていうのは大きかったんですけど、今度そのせいでどういう物を選んでいいのか分からない、何を基準に選んだらいいのか分からなくなっちゃって。
あとは各メーカーがプロ用じゃなくてもプロが使ってるってフレーズが、その製品のブランド力を上げるのに役立つからとりあえずどんなバージョンでもアーティストに無償で渡して。使ってもらうとアーティストさんが使ってる物だっていう宣伝になって。
プロが使ってるものだから音楽聴くのにいいんだよっていうのは全然違う話なんですけど。そういうキャッチフレーズをやっているのでイヤモニと音楽用イヤホンの違いっていうのが全然分からなくなっちゃってるんですよね。
大久保:混在してますもんね。
大八木:それを見分ける方法がなくなっちゃってて。ヘッドフォンとイヤホンって完全に見分けができるんですけど、イヤモニの世界はそれが一緒になっちゃってて。

◆ 若い時から良い音のイヤホンを使って欲しい
大久保:言い方も、カナルがあったり特注があったり、どうなんだっていう。結局ヤマハ方式じゃないですけど、やっぱり学販、高校生くらいになったら、中学生くらいになったら確実にヘッドフォンを使うので、三万円くらいでノイキャンがついてるアイフォンのマッキントッシュが出してる、耳垂れてるやつあるじゃないですか。うちのかみさんも使ってますけど、ああいう物も結局買いやすい金額設定ですよね、ギリギリ。三万円くらいだから。
そういう形で、僕、ONKYOやってた時(エンドース:スポンサー契約)もONKYOの人たちに言ってたんですけど、僕がやってるところで紹介してあげられるけれども、耳型を取ってるものに関してはこんな音だよって(事前に確認)出来ないから、せめて各ユニバーサルタイプを用意して、学生さんだったらこの値段でいいよっていうような事をしていかないと。実際秋葉原に行って生徒たちが確認するのかっていったらそんなことはなくて、1500円とか2000円くらいのイヤホンでライブもやってしまうような感じなんですよ。
だから、そこから変えていかないと。僕は相談されたのでONKYOに。これがガーンと伸びるってことはないと思うよって言って。一番将来的に大人になっていく子たちに、買いやすい値段で、多少(性能が)落ちてもいいから、何かフラッグシップではないけど、そういう学生用のを一個作ってあげたら喜ぶんじゃないのかな?って。
一個そこから入れて、やっぱりONKYOのいいなってなったら皆ONKYO(のカスタムを)買うんだよって。実際僕の生徒でも何人か買った子がいるんで、お金貯めて。それはもう割引率を、僕がモニター(エンド―サ)だったので、学生用に安くできないかなって、作ってくれたりしてたんですよね。
でやっぱり裾野的にいうと、坂本龍一さんが使ってますって言ったら「わー素晴らしい」って思うんですけど、それよりもムーブメントとして求めていくよりは裾野のとこに広く分布しちゃったほうが認知度は上がると思うんですよね。
高校の吹奏楽とか軽音楽部でこういうのがあるよってなったら興味持っていろいろ調べだすんですよね、今の子はすぐできるから。そういう時に僕が一番いいなと思ってるのは、メーカー的にはこういうのがあるよってまずあって、普通に選べるっていう、そういうのができたらいいなって思うんですけど、そこでやってる音楽の先生がそこに無理解だと、ならないですよね。
やっぱり音楽高校とか、せめてああいう所と出来るとね、いいんですけどね。何代も続ていくようなね、一過性じゃなくて。僕がやってた所ではそういう事をしたらどうって、言ってたんですけど結局やれなかったですね。

◆ 最初の導入は価格の安いユニバーサルからで十分
大八木:けっこうそういう考えで、裾野って概念じゃなかったんですけど。(カスタムIEMの製作中に)使っていただいたユニバーサルモデル、j-phonic K2。カスタムイヤモニターのセンサの2XSと同じ音質で構成されています。
あれは元々開発する動機が、カスタムだけだと、結局カスタムを作っていない人はライブで使えない。バンドでも応援に入った人たちは今日だけやるのにカスタムを作れないと。そういうので、でも(バンドメンバーのモニターの)音を揃えたい。
エンジニアさんからしたらより良いステージを作りたい。固定メンバーはカスタムで揃えているけど、ゲストで入った人はどうするのか?ってなったときにそこまでカスタムでやらなきゃいけないっていうの無理だと。
実際あの頃はどうするかっていうと、薦めてるShureの製品をゲストの人に渡すと。でもやっぱり(機種で)音作りが違ってるので。でも実際はそれでやっていた。
で、それをもっと進めるならカスタムに準じるユニバーサルがあれば、それをゲストの人に渡せば、その日のステージのモニターの音を揃えられるっていう、可能な限り揃えられる。
大久保:そうですよね。
大八木:ユニバーサル渡すとその日音的に揃えて演奏できる態勢、ゲストも仲間外れにしないっていうかね、そういうのでユニバーサルモデルが欲しいと。あと耳の形がやっぱりアメリカ人向け、欧米人向けに作られたShureの製品は大きいし、形が西洋系と東洋系って耳の形が違うんですよ。
なので日本人向けの形状、大きさとか形とかカスタムと一緒に使える物が欲しいって、開発して欲しいっていうのが、だいたい最初のころ、イヤモニを使えば使うほどそういう話が出てきて。じゃあ作ろうかって話で作ったのが、使っていただいたK2で。
大久保:いや、あれ良かったですよ。あっ、これでいいじゃん!くらいの話です。全然OKじゃん!っていう。しかもあれComplyのイヤーチップでピッタリついて来るんで。ドラムにはComplyチップっていいなって思ってるんですよ。いかんせんもちが悪いしちょっと高価。まぁ最近安くなってきたとは思うんですけど、あのユニバーサルはすごくよかったですね。
大八木:一番最初の話に戻ると、やっぱり導入機でオーダーメイドだと金額が高いんで、学生みたいな人っていうのはそこまで出来ないけど、(j-phonic K2は)3万8000円で展開しているものなので、(最初の)導入にもなるんですけど。でもずっと使えちゃいますけどね(笑)
大久保:使えちゃいますね。まったく問題ないというか。もう来た瞬間にこの音で出来るんだったら僕は個人的にはOKだなと思いました。全然いいじゃんって。いやホントに。
大八木:ドラムの人からするとちょっと低音が?(足りない?)
大久保:全然そんなことないですよ。ふくよかが良いわけじゃないんで、実音がちゃんと聞こえるか聞こえないかのほうが僕は大事だと思うので。自分の中でふくよかにさせたかったらこっち(卓)でやればいいだけなんですよ。そこが最初からあると、今度そこが嫌だってなったときに何ともならなくなっちゃうんで。
それがさっきの味付けしてない。僕は好きですね。それは皆さん一人ひとり違うとは思うんですけど、実音忠実っていうのは、一番想像力というか、イマジネーションが湧くと思います。だって、勘違いの連続なんで音楽なんて。聞こえてくる音もみんな聞こえ方が違うわけで。

◆ 究極のイヤモニって、付けていることを忘れるイヤモニ
大久保:この調整中のイヤモニがビタッとハマったらライブハウスでやるときとか楽しいだろうなって。
大八木:よく(自分が)言ってるのが忘れられてるって言うか、イヤモニのことを(ライブが)終わるまで忘れられてる、そういえば付けてたって言われたら。
大久保:いやそれは最高ですよね。でも、(今フィット調整中のシリコンイヤモニは……インタビュー中にLaboで調整加工中だったので)そうなりそうな雰囲気があるんですよ。
大八木:たまにそう言ってくれる人が。(イヤモニ)外すまで忘れてたよって。
大久保:なんか人が話しかけてくるけどなんで聴こえないんだろ?っていう感じになったらいいですよね。
大八木:現場行くとつけ外しがめんどくさいんで、みんなマイクを通して喋ってますね。
大久保:僕も全部マイク立ててもらってます。もうマストですね。でも僕の周りでも(イヤモニ)付けない人もいるわけじゃないですか、なんとか付けさせたいんですよ。そうするとシステムが統一されるんです。割と今成功してるんです。僕がみんな見るとマイクをこう、もってしゃべりだしてたのが、最近、最初からマイクでしゃべり出してくれる。だんだんユニバーサルタイプとか使い出してくれて。楽屋とかでこれがいいよとかいう話になって。だって同業者の話が一番わかりやすいじゃないですか。
大八木:それが強いですよね
大久保:それでONKYOの方は、一回紹介したばっかりなんですけど。やっぱりいくらプロの人でもイヤモニの何が大事なのか分かってないと、ごめんなさい変な言い方ですけど十万越えると全然買わないですみんな。購入しない。ウィリー(ウィリー中尾、ギタリスト)が電話くれて話した時に、両方説明して。ONKYOの方の値段は知ってるので、こんな感じだよ。
センサのはフルオプションで二十弱くらいだよって話をした時に、やっぱりあいつは音質を選びたいって。しかもシリコン痛くない、そっちの方がいいって。でもいろいろ調べるって言って。で、僕はウエストンと須山も紹介っていうか、こんな感じだよってしたので。
でもその中で初めて(イヤモニ)作るのに二十万のを選ぶ(注)やつもいるんです。でもそれは、どこにやっぱり行ってるかっていうと音質なんですね。音質に拘る世代。だから彼はセンサを選んだと思うんですけど。で、彼が「いいじゃないか!ってなっていくと、ほかの人にも紹介して。その繰り返しだから。
(注)インタビュー当時は大久保氏の紹介でウィリー中尾氏のイヤモニ3MAXを製作中だった)

◆ 製作・修理の時のメーカーが対応する時間は重要
大八木:ずっとそういうので(紹介が)繋がってるというか。
大久保:僕も松木君に言われなかったら知らなかったかもしれない、それで満足してれば。その先があるってことが分からないんで。持ってたイヤモニが折れちゃったから。時間がなかったから。っていうのを勘案して大八木さんにお願いして。
大八木:意外と時間って大事なんですよね。
大久保:大事!
大八木:(イヤモニは)機材なので。トラブルは付きものなので。そうするとやっぱり(製品が)太平洋渡るっていうのはね。修理のたびに渡らないといけないっていうのは、厳しいんですよね実際運用するのには。
<製造や修理の為に米国に送るという事。…プロ用IEMは米国メーカーが多くその往復路の時間とコストがネックになる。Sensaphonicsはイヤモニ発売当初の2005年に日本Laboを立ち上げ国内製造に切り替えた>
大久保:いや、今はイヤモニにお金かける時代だと思っていて、うん。大事ですよ。昔だったら、生徒に「次に何揃えたらいいですか?」って聞かれたら、「ペダルだよ。」とか「スネア!」って答えたけど、今は「いやイヤモニ買ったほうがいいいよ」って僕は言っちゃうと思うんですよね。
スネアとかはライブハウスにあるので、チューニングも勉強だから全部そこで借りて一生懸命チューニングしてやってって。スキルになるじゃないですか。でも、ここ(耳は)スキル無いので。「もう使っちゃった方がいいよ!」って。ユニバーサルタイプでも全然いいから、音質の良いものを絶対使った方がいいです。
だから、ユニバーサルタイプの(j-phonic)K2は、すごく良かったです。変な言い方ですけどONKYOとちょっと似てる、フラット。ONKYOのユニバーサルタイプ最初試して「いいな」っていった感じを思い出したんですよね。「これでいいかな」って言ったんですけど、「いやいや作りましょう」って型を、リハ終わりにとったんですけど。やっぱりユニバーサルよりこっちの方がいいよねってなって。「こうした方がいいんじゃない?」とか言って、何個作ったかわからないんですけど。たぶん8個くらい作って下さったんです。
(製造がドイツの補聴器メーカーの)シーメンスなんで、最後の手作業の部分の、「ここが違うんじゃないかな」とか。メッシュじゃないけど付けるとピタッとなるんじゃないかなとか。結局汗に影響受けて動いちゃうので
「布みたいなの」とか言って、全然伝わらなかったんですけど。限界があるんですよね、あの(耳への)入り方だと、振動があるし汗が加わるとなる時もあるし、汗かかない現場だと全然平気なんですけどね。
三浦大知君とかやってた時はズレズレで。最後にやったのが沖縄の文化遺産のナカグスクってところなんですけど城跡の。嵐ですごくて。どんどん入ってくるんですよ右だけ。だから今日教えてもらって僕の右耳が(耳に)止まりにくい耳って
大八木:そうですね、右の形はね。止まりにくい耳。左に比べればですけどね。
大久保:ほんとにあの、うんヘッドフォンの時は、やってましたけどね。バンダナじゃないけどゴム製のやつで。
大八木:そういうのもやってましたね。(上から押さえつけるようなもの)
大久保:みんなやってましたよね。あの、バンヘーレンのドラムがやってたから、流行ったんですけど。あれすると動かなくていいですよ。
大八木:(ドラムの人は身体が)動きますからねぇ。
大久保:動く。

◆ 自分のベストの状態を探る
大八木:そう、今の状態が大丈夫であれば、外耳道のほうを長く長くってするのはまだ可能性があるんですよ。ほかの部分はこれ以上、ちょっときつめに作るとかはできるんですけど。(形状を変えて)成形することはできないんですけど。外耳道はまだ先があるので、可能性としては長くできる可能性はあるんです。
大久保:おー!!
大八木:ただ、長くなればなるほど、(外耳道の先端が)通常は骨の中、頭蓋骨に入ってる位置なので痛みが出るんですよね、奥に行くと痛みが出やすい場所になるので。痛みが出たら使い物にならないのでそこの痛くなるギリギリの手前っていうのは人によって違ってて。それは耳型を見ても分からないし本人が見ても分からないし。
大久保:付けてみないと。
大八木:そう、わからないんです。もしもやるんだったら(製品に)長く足すっていうのはできないので、痛いの覚悟で長く作って、短く下げていく。ここなら痛くないってやる。でも、痛みってジーンって残ってるんで、気長にやらないと出来ないんですよね。さっきの痛みなのか今の痛みなのか分かんなくなってくるんですよ。だんだん。
大久保:難しいですね
大八木:痛みがすぐ消えてくれれば一時間とかでできるんですけど。敏感なところなので。そうすると通常のところでも痛いになっちゃうんですよね、痛みが残ってて。理論的にはできるんですけど、一週間くらいかけたらできるんですけど、実際には出来ないじゃないですか。で、その人にとっての一番ギリギリの長さっていうのを見つければ、もっときつくなります。
大久保:いやでも、(イヤモニは奥が)深いなぁ。
大八木:よくあるのは、作って使ってるものは大丈夫だから、その次作るときは長めに作ってみましょうって。二十年とか十年とか使ってる方って何年かに一度作り変えて、耳の形も変わっていくんで。で作り直すときには、前より長く作ってしまおうかとか。でも、痛みがでると前は大丈夫だったのに今回はダメだとなっちゃうので、それを理解して、トライするかしないかはご本人次第になっちゃうんですよね。作ることは出来るんです。
大久保:限界突破ですね。
大八木:限界探りですね。
大久保:あはははは。でもそう、そこまで。
大八木:それをやってみてるのもあって。長渕剛さんなんかは、「まだ長くして大丈夫だよ。もっと来てよ!」って。次作るとき長く作って、「まだ大丈夫だよ!」って言って、どんどん長くなってる。

大久保:ぶちさん使ってるんですか?
大八木:使われてます、もう随分になりますね。2006年ぐらいからですね。(注:2006年12月イヤモニの導入開始)
大久保:よろしくお伝えください。僕もレコーディングとライブちょっとだけど。一時期やってて。
大八木:富士山ライブ(注:2015年8月22日)をやった時に、やっぱり難しいライブ。野外だし会場大きいし(注)[会場面積:35ヘクタール(東京ドーム 約7個分)、舞台幅:120メートル/奥行き:77メートル]、エアーの音っていうんですかね、その感覚、もちろん(アンビエント)マイクは立てて(モニターに会場音を)入れてたんですけど。どうしても移動が結構あるんで、おっきなステージなので。移動すると位置関係がずれてったりとか。マイクの立て方次第で空間、十万人いる気配感がとれないとかでいろいろあったらしくて。(ライブの)一週間後くらいに、エンジニアさんと三人でミーティングしようってなって。
次回やるときに、今回の問題を直す方法があるんじゃないかって。で、うちでやってるマイク付きの、エアー(環境音)を入れるためのマイク付き(3Dアンビエント・イヤモニター)の。それだとエアーマイク立てなくてよくなるのでそういうのがあるっていうのが、サポートでアメリカから来た人が知ってて。それがどういうものか知りたいっていうので。次回もしやるなら前と同じじゃ駄目だから、モニター環境、特にエアーの取り方ですね、グレードアップするための、まだ自分に感覚が残ってるうちにミーティングしようって。ずいぶん、今日みたいに、三時間くらいその話でディスカッションしたことがありますね。
大久保:ぶちさん熱い人だから
大八木:色んな話をしてくれて。モニターだけでなくね、音作りに関して。
大久保:だって音楽業界の生き字引ですからね。色んなノウハウ持ってますから。
大八木:「客席に降りてって(ホールの音を)聴いてるとかはしてるよ」って。「珍しいですねっ」て。メインボーカルやってる人が自分が歌わないで、バンドだけ鳴らしてるのをステージ隅々まで行ってギターはどうかな?ってモニター。お客さんが聴く音を全部聴いて廻るって言ってたんで。
大久保:いやーやるんですよねぇ。絶対やるんですよ。

【PART 1】 【PART 2】 【PART 3】に続く
☆ ☆ ☆
最新のニュースを、Twitterで告知しています。






