NEWS PHONIC

ドラマー大久保敦夫と語るイヤモニの話。(その3)なぜイヤモニが必要なのか?耳を守りながら音楽の可能性を拡げる。
(Talking about IEMs with Atsuo Okubo, drummer,Part 3)

コロガシから始まりヘッドフォン、イヤモニへとモニター環境を変える中、聴覚を守る重要性と理想とする演奏を助ける器具としてイヤモニはその利用の目的を拡げていきます。

演奏とモニターとの関連性、ライブ会場から見たイヤモニの現状、そしてこれから“イイ音楽”を目指すなら“イイイヤモニ”を使うべき!と語ります。

数多くのアーティストからのフィードバックによって音質、遮音性、耐久性、強靭性そしてケーブルの交換、メンテナンスの容易さなどの利便性、さらには耐水、耐塵性などプロニーズを30年追い求めて進化してきたイヤモニター。

ミュージシャンとイヤモニ開発者が“今後必要とされるイヤモニとは何か?”を遠慮なく本音で語り合う対談その3です。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-12.png

大久保敦夫 Atsuo Okubo  【Drummer】

高校在学中よりレコーディングやセッションなどに参加し、現在に至る。 これまでに野口五郎、伊波杏樹、三浦大知、w-inds、チューリップ、MULTI MAX(CHAGE’s Band)、CHAGE&ASKA、永井真理子、Hi-Fi Set、沢田知可子、斉藤和義、国分友里恵、吉岡秀隆、甲斐よしひろ、甲斐バンド、髙橋真梨子、徳永英明、中島みゆき、花*花、古内東子、浜田省吾、長淵剛、KinKi Kids、ENDLICHERI☆ENDLICHERI、中西圭三などのレコーディングやコンサートツアー、小堺一機の『小堺クンのおすましでSHOW』や、ブロードウエイミュージカル『RENT08~09』、大人計画の『30祭2018』『キレイ2019~2020』『シブヤデアイマショウ2021』のステージオーケストラに参加。PAISTE CYMBAL、LERNI STICKのモニターも務めている。

☆    ☆    ☆

大八木哲夫 Tetsuo Oyagi 【Sensaphonics Japan代表】

世界屈指のIEMブランドを牽引するとともに、長淵剛、桑田佳祐、布袋寅泰、椎名林檎、安室奈美恵など、多くの国内アーティストのイヤモニターを製造。米国アーティストではビヨンセやアッシャーなども担当している。2004年に日本にIEMを導入し、国産初めてとなるIEMを製造して以来、現在でも新機種開発を手掛けるイヤモニ・クリエーターである。実は耳型から造るオーダーメイド・イヤホンという概念が日本になかったため“カスタムIEM”という呼称を命名して普及に尽力。この十数年は米国本社と連動しミュージシャンの聴覚保護運動、クラシック演奏家のためのミュージシャンイヤプラグ利用推進にも精力的に取り組んでいる。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-13.png

☆    ☆    ☆

なぜイヤモニが必要なのか?耳を守りながら音楽の可能性を拡げる。

◆ 音楽は勘違いの連続。やろうとする事にNGはない。

大久保:僕が一番何に影響受けたかっていうとFEM(米軍極東放送網・在日米軍向け放送)ラジオなんですよね。高校の時の先輩がすごい聴いてて、何でですか?って聞いたらやっぱり、(日本には)半年以上遅れてくるじゃないですか、向こうのアーティストの新譜が。それがすぐ聞けるんだぜって。でその時聞いたのがオリビア・ニュートン=ジョンの「そよ風の誘惑」っていう曲があるんですけど

大八木:レコードで持ってるかもしれないですね。

大久保:で、それを聴いたら、部室で810(FEMのチューニング周波数)でしか聴いてないから、すごいリミッターかかるんですよね。で、スネアが、ラララ~みたいな曲なのにドンドンってずっといってるんですよ。アメリカの音楽ってこうなんだって。この人アイドルなんですよね?凄いよなぁって、じゃあこの音どうやって出るんだろって生でやったのが最初、ゲートなんてまだない。

大八木:でもみんな耳コピやってましたよね、あの時代ね。

大久保:やってました。でこの音どうやったら出るのなんて、先輩たちと。雑巾被せてガムテで張って、違うよなぁとか言いながら。でも普通に当時のレコードを聴いたら、すごく綺麗な音なんですよ。もう、FMかなんかで大人になってからたまたま「そよ風の誘惑」が流れて、これ懐かしいなぁって聴いたらすごく静かなちゃんとしたドラムだったんですよ。でも、そのリミッター掛かったドラム聴いちゃって、それがカッコいいと思ったから、ずっとその路線できてるわけですよ。

なんていうか、それからその頃聞いたカーペンターズとか買って聞いて、全然違うじゃん!って。でも、そういうなんかわからないけど間違ってるけど情熱みたいな、イマジネーション沸くみたいな、こんな綺麗な声の人で、アメリカはこんなガツンガツン叩くんだカッコいいなって。

そこがまず間違いの始まりなんですけど。でもそれが結局僕の色みたいになっていって、「うるせぇんだよドラム」って言われ、いやうるさくないはずだ、アメリカミュージシャンはこうだと思ってるから、絶対にひかないわけですよ。二十歳とかの小僧がアレンジャーの先生に真面目に討論するんですよ、旅先で。

あの曲はすごい静かなバラードじゃんとか。だからスネアがいるんですとか。もう自分で完璧にこうなっちゃってるから(両目を塞いで回りが見えない仕草)。でもそれが良いって呼んでくれる人がいるから。ああいう奴いないよねって。だからまだ出来てるんだと思うんですよね。

だから勘違いの連続なんだ音楽なんてって思ってて。だから生徒にNGはないって。(正解は)教えられないし。ただ気持ちが入ってないものは全部NG。やろうとしてることにNGはないけど、何かに引っかかるかもしれないから。誰かのアンテナに。ただ気持ちが入ってない“てきとう”なのはすべてNG。そこがやっぱり個性というか。……また違う話になっちゃいましたね(笑)すみません。はははは

大八木:あははは。でも勘違いは面白いですね。でもそうなんですよね。出来たもののいい悪いを判断するのってすごく難しいんですよね。そういう意味ではね。

大久保:でも、僕だからあのユニバーサルモデル(j-phonic k2)が良いって感じた訳ではないと思うんですよね。音の素養というか、音の素質というか、向いてる方向性がナチュラルかナチュラルじゃないかっていうと、ナチュラルだから。ブーミーに下が出てるのかっていうとそうでもない。でもちゃんとローも鳴ってる。十分です。

それ以上のことは、自分でやったほうが。だって自分の中でも日々変わってる、昨日OKだったことが今日OKじゃないんで。そういうことを考えると、ずっーと戦ってるっていうか、自分でやろうとしてることと、見えてないんだけど、言葉にできないんだけど目指しちゃってるものとか、そういうのを素直な感じにしてくれる音のほうが僕は好きなので。

うん。ああいうのが、こう、学校とかに広がっていくと良いと思うんですよね。もうね、悪い音で聴いて欲しくないんですよ。ほんとに。千円とか、コンビニで売ってるのとか

大八木:根本的によく思うのが、良い、音楽をやろうとしてるっていうのは音を出そうとしてるわけじゃないですか。

大久保:うん

大八木:いい音を出して、良い音を出そうとしてるのに、自分の聴く音を気にしないってどうしてそうなっちゃうのって

大久保:ほんとその通りです。

◆ イヤモニは音が重要

大久保:やっぱり、音で決まっちゃうんで、音楽って。

大八木:そうなんですよね。モニター。最終的にはモニターしか頼りになるものがないですもんね。自分の演奏を確認するのもモニターですからね。モニターって、なんかあの、こうよく言うのは、自分の好きな音で鳴ってくれっていう風な言い方をする人がいるんですよね。

自分の好きな音で出るイヤホンが欲しいっていうような言い方をする人がいるんですけど、モニターの概念と好きな音になるっていうのは違うんで。モニター機にとってどんな音がアーティストに必要なのか時々説明するんですけど、わかってるくれる人もいるんですけど。でも好きな音でやりたいって方もいらっしゃるんで。モニターがなんでそういう音が必要なのか学ぶ機会があんまりないんですかね。

大久保:どうなんですかね。

大八木:特に若いバンドなんかだと、好きな音で、好きな音の出るヘッドフォンかけてレコーディングで。マスタリグとかの調整もそれでやって。例えばベースがどんどん響くようなヘッドフォンで聴いて調整しちゃったと。で出来たものを聴いたら(低音の)音が無いよって話になっちゃう。その辺の仕組みがピンと来てないみたいな所があって。

大久保:アコースティックになればなるほど難しいですけどね、ジャズとかクラシックとかになるとイヤモニ使わないので、それはやっぱりどこかを捨てないといけない部分って必ず出てくると思うんですよね。それがこう、イヤモニをして外の音も多少入ってきて、中でブレンドしてっていうのを求めるのか。

僕がやってるのはスネアのメインマイクの横にもう一個マイクを立ててもらって、その音を直でこっちで上げ下げできるように。空気感を、音そのものってより空気感を知りたいので。(イヤモニは)すごく密閉空間みたいになるじゃないですか?

大八木:そうですね

大久保:それをなんとか取り除きたい。

大八木:いわゆるエアー(環境音)を入れておくってことですね?

大久保:そうですね。なんですけど、それが必要ないくらいしっかりしちゃえば、いらないんですよね。空気感の音って。

大八木:そこの部分は皆さん意見が分かれてて、必要だって人も多いですけどね。

大久保:僕は、全然空気感はそこから感じられるっていうのは思ってるので、そこは最後の砦みたいにしてて、ダメなときはそれを上げるみたいな。でもセンサさんの使っていいなってなった時には、全然使ってないです。いい音って色んな解釈があると思いますけど、僕の中での音っていうのはフラットで、そのままの音が出てれば、僕はそれでいいと思うんですよ。それ以外のエンジニアリングっていうのは、そういうものはモニターマンとの相性になってくるので、そこで作ってもらうしか、実はないですよね。

大八木:最終的にはね、モニターは結局演奏してる人たちに戻してる音なので、最終的にはホールにどういう音が出るかの問題なんですよね。お客さんに音が出てるかって言うのが一番大事になってきちゃうから。なかなか調整するのが、理解するのが難しいですよね。お客さんがどういう音で聞いてるかっていうのを、ほんとに自分がそれを聴いてやれるかっていうとちょっと話が違ってきますもんね。

◆ バンドメンバーが同じイヤモニを使う理想的な環境

大久保:ただ、モニターをする、ステージの上でやるって時になると、表(ホールの音)のこと関係ないんですよ。僕らの中が気持ちよくなってる音が、表でどうなってるかっていうのは。表のハウスモニターの問題なので。だから一番いいのは、ステージの上の人間も全員同じメーカーの同じものを使っていて、モニターマンも同じメーカーのものを使ってするっていうのがいいんですよね。

大八木:共通言語ですよね。

大久保:ほんとは一番。だから、ちゃんとしたっていう言い方はあれだけど、熱心なモニターマンは三社くらい全部持ってますね。

大八木:エンジニアさんがですね?

大久保:そうモニターマンが。表の音をどう作るかって考えると、出してる音がちゃんと出てれば僕らの仕事は終わりで、ここでグルーブがみんなで保てていい感じになれば僕らも楽しいし、そこがまず基本で。僕らが楽しくならないとお客さんが絶対楽しいはずがないわけで。だから、僕らが楽しむために、今はもうイヤモニっていうのはツールとして絶対に必要なんです。

ただ、ジャズとかの場合、例えばヴォーカルにリバーブもかけない人もいらっしゃるし、そういう人たちはピアノの音も、わざと空いてる所に近かよってリバーブを感じるとか、ギターのそばにいってエモーショナルな部分を感じるとか、そうやって会話してる人たちにとっては、イヤモニっていうのは要らないと思います。

なんでかっていうと、その自分が出してる、ドラムでいうとピアニッシモとフォルティッシモの差が分からなくなるんです。だからジャズの人たちのイヤモニは僕が思うに難しい。僕はジャズのドラムをやってるときにイヤモニ使うかって言ったら使わないし、まずそこにクリックが来ないので、クリックが無いなら外したいんですね、外して耳栓したいくらい。

今は、イヤモニを知っちゃったら、あの大きさの音でそのまま演奏は出来ない。そうすると、音量がダウンしていくので、耳が煩いっていうので、そうすると他のメンバーの音も下げなきゃいけない、そうするとロック系ポップス系はちょっと難しいです。うん。そこでグルーブで楽しむっていうのは。音の会話が厳しくなるような気はします。

◆ イヤモニはどんなライブシーンでも使いたい

大久保:でもちゃんとしたイヤモニだったら、もう小っちゃいライブハウスでも僕は使うつもりでいるので。

大八木:そうですか?

大久保:もうその方が絶対いいですね。一回イヤモニやっちゃうと、もう無理ですもん。あの音量やるの。あの音量の中でやるの。

大八木:やっぱりイヤモニの方が音量が下がってる感じはありますか?

大久保:絶対!絶対下がります。楽になるし。だって僕がドラム始めた頃なんて、マーシャル(ギターアンプ)とかジャズコーラスとか抜くんですからね、最大にして。抜いて十字くらいのところに収めるんですよ。で、出してないよって、いや出してる、抜いたでしょ、抜いて十字のところに刺したでしょ?って。見てた?とか言って戻すんですよ。で、彼らはベースとかギターの特にロック系の人って、ここで聴かないんですよね。全部股下から音ぬけていくんですよね、だから音量感じないんですよね、全然感じないです。

座ってやる時ってレコーディングの時に多いので、だいたいアンプ鳴らさないし、向こうの違う部屋で分離して隔離して録るんでそもそもそういう事がおきないんですけど、ライブの時になると普通にやるんですよ。「でかいって」、「デカくないって」。中尾くん(ウィリー中尾、ギタリスト)とも何度もこれでやりとりしましたから(笑)

大八木:昔はね、音の取り合いというか。

大久保:いや、今もすごいところは凄いですよ。もう、ホントにスタジオ開けたらウィ~~ンとかいってて、なんだ?この変な周波数って思って。

◆ 昔の音量はすさまじかった

大久保:僕は21位の頃から桑名正博さん、バンドに在籍してたのですが、ギターが桑名さんいれて4人いるんです。で、マーシャル(ギターアンプ)が六台。そして桑名さんのジャズコーラスが僕のキックの前に置いてあってフルテン(音楽演奏時に使用するアンプのコントロールツマミを最大値(10)にセッティングした状態を指す)ですよ、全部。で入ったらウィ~~ンっていってるんですよ。いやだなぁって僕の音なんかもう聴こえないですよ。チーチーチードッパンのドッパンの音が聴こえないですから。チーチーって行くときに皆グォーってボリュームペダル踏んで、そんな中で叩いてましたもん。ガンガンガンって。

お前スネアもっと叩けよって言われちゃう。そういう時代ですよ、お前生音ちっちぇんだよって。いやいやいや、これ何とかしましょうよって、僕のキックの前にあるギターアンプが僕のキックの音を塞いでるんだもん。それ上げるとキックのマイクがギターの後ろから出てる音ひろって全部上がっちゃう。PAの人はリハの時キック出してないんですよ。変えればいいんですけど、桑名さんこの位置が好きだからって。そういう無慈悲な時代があって。その時も僕、耳栓やってましたからね。

Sensaphonics 3MAX Hi1点と同型Low2点のドライバー3点の構成となる。

◆ 大音量を防ぐためにイヤモニが登場

大八木:そういう時代があったから、やっぱり何とかしないといけないってことになってったわけですよね?

大久保:だって夜寝れないんですよ。夜もうクリックが自分の中でずっと鳴ってましたもんカンカンカンカン。ずっと。お酒飲まないと寝れない。明け方まで寝れないですよ。そんな時代があり、もうちょっと何とかなんないかなぁってなったら今度(ヘッドフォンの)片耳になり、やっとこのイヤモニの登場で、うわぁすっごい(音が)小っちゃく出来るって!

大八木:イヤモニは小さい音がちゃんと聴こえるって言われますね。

大久保:はい。

大八木:小さい音が聴こえてくるっていうね。

大久保:僕、聴力少し戻ったんですよ。倒れた時よりイヤモニ使いだしてから。聴こえないのはもちろん聴こえないし、聞き返すことも前よりあるかもしれないけど、たぶんそれって耳が、鼓膜の前で鳴る音を拾おうとしてると思うんですよね。ここを(ヘッドフォンを)辞めちゃってて。イヤモニでやってる時間が長いので。これで(ヘッドフォンで)仕事をしてる時は音はハイ落ちもしなかったし、聴こえたんですよ、一応集音の役目があって、僕の個人的な感想ですよ。でも、イヤモニをするようになってから、ここらへんでキャッチ出来てた音が、中まで入ってこないと鮮明にならないような気がしてます。聴力が落ちたというよりも、たぶんここの集音をしてない気がする。耳たぶが力を発揮しない。

大八木:耳たぶの影響を聴き分けているってことでしょうか?

大久保:わかんないですよ、でも僕はすごく感じる。だから、喋ってても、聴こえないときは聴こえないし、このタイプの声が聞きずらいとか前はなかったので。うん。まぁ、個人的な感想ですけど、言い訳に近いのかなぁ。でも耳って全然解明されないのは、個人差がすごく大きいんだと思うんですよね、やってる職種、普通に生活されてる方で補聴器をつける方、これ僕みたいに職業病みたいになってて、一番凄い時を経験させてもらったんで、それで痛めてしまった耳の状態、これっていう、いわゆる万人に効く薬がないのと同じで、色んなパターンがあるんだろうなって。

大八木:症状は色んな所に出てきちゃってると同じじゃないでしょうかね。

大久保:僕の感想ですけどね。そういうのを感じてるんです。

◆ 良いモニター音を得るために皆工夫をしている

大八木:右と左ってバランスが崩れてる感じってありますか?

大久保:えっと、ONKYOの(イヤモニの)時はありました。実際、だからちょっと右側に寄せて、右かな。大体いい、MACKIE(音響ミキサー)とかが来ると、最近はステージ用でもレコーディングするみたいな卓(パーソナルモニター卓:演奏者各人がモニター音を自ら調整する)を最近置いてくれるじゃないですか。

僕はあれがダメなので、AVIOM(パーソナルミキサーの米国メーカー)とか嫌いなので。音が痩せるんですよ。で、MACKIE(米国の音響機器メーカー)っていうのが一番音を出してくれるんで、あれの大きいのを貰って。なるべく自分で調整出来るようにしてます。いつも一緒のPAさんだったら大丈夫なんですけど、初めてやるときは、それを口頭で説明するのが難しいので。長くやってる現場は話をして、お互いに共有してますけど、時間がない現場はそれが出来ないので。ベリンガ(独の音響機器メーカー)とか来ちゃうと1.5くらいまでいかないと、振ったギリギリのところまでいかないと(音が)来ないなぁとかいうのがあるので。

もう一長一短なんですけど。いわゆるツーミックス(多数のトラック音源をL+Rのステレオ2チャンネルにミックスダウンする事)、ステレオの上げるじゃないですか、それを半分まで上げて、こっちのフェーダー(自分の音響ミキサーで上下に動かして音量を調節するつまみ)を一列にしてゲイン(音量調整用のゲインツマミ)でやるのがいいのか、完璧に(フェーダーを)上げて、機械自体を鳴らして、ゲインでやったほうがいいのかよく試すんですけど、MACKIEとかでやると何やっても大丈夫なんですよ。

ちゃんと。いわゆる他のが軽自動車だとするとアメ車なんだなと思うんです。そこにもう一つ同業者の先輩なんかは出口から自分のヘッドフォンに刺すところにパワーアンプをしてる人もいるくらいなんで。

大八木:最後の全体を調整する?

大久保:ふくよかに鳴らしておいて、こっちで調整するという、今皆さんやってることなんだと思う。

大八木:けっこう皆さんテクニックを、オリジナルテクニックを使ってますよね。モニター環境をどうするかっていうのをそれぞれ工夫して。

◆ 癖のないイヤモニがいい

大久保:それがたぶん、さっきボーカルの方とかが好きな音でやりたいっていうのはそういう事だと思う。でもやっぱり、ここ(イヤモニ)に癖があると癖を修正するところから始めなきゃいけないんで。癖のないイヤモニを使うほうがいい。おそらくその癖が出にくいのが、2(ツードライバー)なんだと思うんですよね。ツードライバー。3(ドライバー)になると、ドラムの場合はエレドラ叩いてるみたいになっちゃって。解像度が上がってるのかはわからないですけど、薄く広がっちゃって。Shureの6ドライバー、5ドライバーか?今9くらいあるんですよね?

大八木:なんかね、競争かのように(ドライバーを)沢山入れたらエライみたいな時代になっちゃったことがあって。ここ三年くらい前ですかね。(注:Sensaphonics 3MAXは高音ドライバー1ケと、同じ低音ドライバーが2ケ組込まれているので、システム的には2ドライバーと同じ挙動になる)

大久保:結局、細いは細いですよね、そこじゃないんですよね、僕も試しに聴いたりしますけど。結局そこじゃないんですね。解像度そんなに、めちゃくちゃ解像度いらないけど、最低限あれば、こっちでやれる。それがビッタリハマればそれでいいんですけど。たぶんその余地が、残ってるもののほうが好きな音でやり易いと思うんですけどね。

大八木:(イヤモニには)アレンジする余地があるといい、ということですね?

大久保:うん。余地があったほうがいい。

大八木:パックになって出来てないってことですよね。味付けされてない、自分で味付けができる。素材。料理でいえば素材のほうがいいってことですよね?

大久保:素材からちょっと火が入ったくらいで。あはははは。なんかそんな感じの。魚だと三枚におろされてる状態がいい。

大八木:塩まで振られちゃってると、その塩を抜く作業から始めないといけないっていう?

大久保:そう!そう! 特にドラムって電気楽器じゃないので、そのヘッドを叩いた、沈んだ感じとかが分かるか分からないかで、ここが(演奏が)全然変わってきちゃうんですよね。でも信号になって入ってきちゃうと、それが過度になんか、デフォルメされてたりしちゃうと、「いやいやいや」ってなっちゃうんです。

大八木:それでは自分がやろうとしてる事が出来てるか出来てないかが判断できないですよね?

大久保:出来ないですね

大八木:実際は出来てるかもしれないんですもんね。

大久保:そうそう。タッチが。

大八木:それを耳で変化させられちゃってると、それが現状でどうなのか判断できなくなるってことですよね?

大久保:悩んじゃう。そうすると、ずーとチューニング始まっちゃうんですよ。あれ?あれ?って。

◆ 演奏は音を創ること

大八木:逆に言うと叩いてるところで出来てなくても聴こえちゃいますよね?

大久保:そうです!そうです! 不味いです。最近、エレドラから始める子が多くて。

大八木:そうですか。

大久保:いやもうドラムセットは家で叩けないからエレドラから入るんです。そうすると一人で武道館で叩いてるような気持ちいい音するから。なんでも(データが)入ってるから。だから、どうやったらこの音が出るってところからやらないで、どうチューニングしたらこの音出るんだろうなってところじゃなく、もう最初からその音が鳴るんで。その音が鳴るもんだと思うんですよね。

で、僕が音楽の講師やってたころは、専門学校とか大学で、ドラム叩くと、あれ?って。おかしい、僕の持ってるドラムと違うって。何使ってるの?って聞くとエレドラですって。エレドラと生は違うんだよって。で、じゃあ、この音を出すのに三つくらい叩き方するから、「どれが一番近いと思う?」って。「二番目が近いと思います」「正解!」って。

でもこれに色んなマイク立てて通して出た音があの音なんだよって。そうするとだんだん興味が湧いてくる。エレドラじゃない生ドラムの楽しさっていうのがあるので。同じように叩くねってやると煩いってなるんですよ。それくらい音量差あるし。自分で下げられるし、エレドラって。だから良いことではあるんでしょうけど、家で叩けるってメリットはありますよね。

大八木:イヤモニに関していえば、最初の導入期というか、イヤモニ自身の音楽業界の導入期以前からやってる人と、導入されて普通にイヤモニ使ってやってるのが当然っていう人では、だいぶ感覚が違いますよね。

大久保:違いますね。いまだに、絶対ヘッドフォンって人は沢山いますから。僕、その気持ちもわかるし、ドラマーの先輩でもいます。片耳なんか外しちゃうもんだからクリックガンガン漏れて、こっからガンガン聴こえてるって。それでも、うん。それじゃなきゃ出来ないって気持ちはわかります。

それはそれでいいと思うし。でも、イヤモニっていう一つのピースがこんだけ救ってくれる感じがあるっていうのもまた確かな事だから。だから、どんどん進化するかもしれないし、進化しないかもしれない。このまま出尽くしてるかもしれない。わからないですけど。あんまり、アーマーゲー(メルセデスベンツのチューニング・ブランドのAMGのこと)みたいにならないほうがいいですよね。ベンツはベンツで十分素晴らしいんで、アーマーゲーにする必要はないと思います。

そのものが良ければそれで。あまり何かしてあると、さっきも言ったように味付けがされちゃうと、やっぱり音が遠くなるんですよね。自分の好きな音から遠くなる気がします。音楽から離れるっていうことでしょうか。

取材協力:カレーとコーヒーと音楽の店「ハーバーズミル」。
右がオーナーでアコギ製作者としても知られる坂田久氏。

◇   ◇   ◇

<対談は、2022年2月2日に山梨県甲府市のHARPERS MILLで収録されました>


坂田久氏は、お店の隣にギター工房と音楽スタジオを構え、演奏者の個性にあわせたハンドメイドの『サカタギター』のアコギ製作者として名高い。

火曜・水曜定休(営業時間11:00〜17:00)

山梨県甲府市東光寺1346 Tel:055-233-3157


アコースティックギター、シンガーソングライターのライブなども開催されています。出演者・日程などはFaceBookをご覧ください。

ハーバーズミル☐↸

SAKATAGUITARS

☆   ☆   ☆

【PART 1】 【PART 2】 【PART 3】

☆   ☆   ☆

最新のニュースを、Twitterで告知しています。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: ツイッターバナー用写真.png

合わせて読みたい関連記事

Comments are closed.