宮城県の仙塩利府病院に2020年4月に開設された「ミュージシャン外来」について、国内各新聞社がその開設を報じています。報道ではプロ・アマを問わず音楽を演奏する人の難聴や音響過敏に対してセンサフォニクスのミュージシャンイヤプラグ(ミュージシャン耳栓)を使用して治療に取り組んでいることを報じています。
宮城県の仙塩利府病院に2020年4月に開設された「ミュージシャン外来」について、国内各新聞社がその開設を報じています。当方で把握出来た記事だけですが、東京新聞(2021.1.12)、沖縄タイムズ(2021.1.7)、南日本新聞(鹿児島)、長崎新聞(2021.1.11)、山梨日日新聞(2021.1.11)、デーリー東北(青森2020.12.28)中日新聞(2021.2.16)などに掲載されています。また、WEBニュースでも共同通信社と52新聞社が役に立つ医療、介護、健康情報を届けている【地方紙と共同通信の47NEWS(よんななニュース)】で同記事を掲載し(2021.2.2)、夕刊フジによる【ZAKZAK】でも【医療 新世紀】プロからアマまで、演奏家の「耳を守る」 一人一人に合わせた耳栓など「ミュージシャン外来」登場との記事を掲載しています(2021.2.7)。
この「ミュージシャン外来」ではプロ・アマを問わず音楽を演奏する人が大きな音で難聴になったり音響過敏になったりしており、特殊な耳栓であるミュージシャン耳栓を使用して耳を守る治療に取り組んでいることを報じています。
この時に使用しているのが米国センサフォニクス社が開発したミュージシャンイヤプラグ(Musicians Earplugs ミュージシャン・イヤープラグ)です。……センサフォ二クス製品は日本ではジェイフォニック社(旧 Sensaphonics Japan)が国内製造しています。
記事の中では、開設のきっかけになったのがクラッシックの音楽評論誌の「メルキュール・デザール」を主宰する音楽評論家の丘山万里子さんからの呼び掛けだったと記されております。
メルキュール・デザールでは音楽家の難聴問題について二度にわたり記事を掲載されており、その中でミュージシャンイヤプラグについても紹介しています。
演奏家の難聴問題について
続報:ミュージシャン外来開設などについて
新聞各紙では、音楽家の騒音性難聴の問題点を示すとともに、英国での楽団員によるロイヤル・オペラ・ハウスへの提訴と判決を紹介しています。そして「ミュージシャン外来」での治療でミュージシャンイヤプラグの使用により演奏を続けられるようになった事例などを紹介しています。
各報道の中では、小林俊光 東北大学名誉教授が特に注目するのが、大音量による影響はさまざまだが最近の米国での研究で、演奏家に潜む「かくれ難聴」(Hidden Hearing Loss)というものがあり、音楽専攻の学生は一般の学生に比べ、周波数8キロヘルツを超える高い音を聞き取りにくいことが解ってきた。これを放置してしまうと、中等度難聴に進行していき、演奏活動がままならない状態になる可能性が高まり、大きな音で毎日練習を続けていることが原因の可能性があると報じています。「かくれ難聴」の初期は、日常生活では気付かない高周波数域が聞こえづらくなることから始まるため、新たに高い周波数に対応した特殊な聴力検査装置(リオン社製のオージオメータ(聴力測定機器)AA-H1)で「かくれ難聴」を早期に発見して進行を防ぐ必要があるとしています。
“音楽家の難聴の早期発見”を第一の目標として外来を開設する運びになったのです。と発言されています。
センサフォニクスが取り組んでいる難聴の早期発見と対処、そして難聴予防の為のイヤプラグや遮音性の高いシリコン製のイヤモニターの装着による難聴の予防という目的に通じるものがあります。
この新たに導入された検査機は、従来のオージオメータの周波数はもちろん、追加で8kHz以上の周波数を16kHzまで測定でき、ミュージシャン外来を受診していない人でも、希望すれば検査可能とのことです。日本の音楽界では演奏者の聴覚を守るという意識が、ようやく最近芽生えてきた段階で、まだ十分ではなく、ミュージシャン外来を受診すれば新たな知識が増え、難聴の予防にもつながるのではないかと発信しています。
ミュージシャン外来で今後取り組んでいきたいこととして、当院を受診して治療するということだけでなく、“演奏家の聴覚を守る必要性”について、認知度を上げていきたいという目的があり、例えば、耳鼻科とオーケストラの運営母体が協力をして、定期的に楽団員の聴覚管理など、体制を整えていくことも課題になってくると思うと述べています。今は受け皿が一つできたという段階なので、これから試行錯誤して良い方向に持っていきたいとしています。
この記事中で治療の一環として装着を勧めている耳栓(ミュージシャンイヤプラグ)の利用方法は具体的には解説されていませんでしたが、実装して生活や音楽活動を継続していくという面だけでなく、音響過敏の場合では、その原因はいろいろなケースがありますが、難聴治療や手術のあとに過敏症が誘発されるケースがあることが知られています。この場合、時間の経過とともに改善されていくことが多いようですが、初期の場合は生活に支障がでるほどの音量(世界中がうるさくて暮らせないほどの状態のようです)になることがあり、この際にミュージシャンイヤプラグが、フィルター調整でその遮音量を25dB,15dB,9dBと調整することが出来ますので、これで回復経過に沿ってあわせ使用していくという使い方もあります。治療経過とともに遮音量を下げていき、完治して耳栓を外すところまで目指すということになります。
もちろん、回復した後でも騒音環境下での予防のために、その時々の騒音にあわせて随時、遮音量を調整して使用することが出来ると言うのも大きな効用です。治療にしても予防にしても遮音量が選択できるということが大きなメリットということになります。
それによって片耳に難聴や聴覚過敏などがあって左右の聴覚のバランスに違いが出ているような場合は、それぞれ左右で異なるフィルターを設置して運用すると、フィルター区分によりそれぞれの耳での遮音量を変えて使う事ができます。また、予防利用の際の応用としてヴァイオリンの演奏時のように左右から聴こえる音量が大きく異なっている場合も遮音量をつけるフィルターを変えておくことによって左右を調整し、聴こえる音量を揃えて使用するという方法もあります。
今までこのような場合、市販の耳栓で対応をしていましたが、通常の市販の耳栓では、高音域帯は減音して、相対的に低音域帯は遮音できないということが起こり、音が歪んで聞こえてしまい音楽を聴くには不向きな器具でした。ミュージシャンイヤプラグという特殊な耳栓はこれが改善できるということになります。
また、この音質の歪みが出てしまうという問題以外に、市販の耳栓の場合は、耳の外形の大きさや形状に個人差があるために、ユーザー各人に安定した遮音量が確保できず、個人差が発生するという問題がありました。
一方、ミュージシャンイヤプラグは本人の個々の耳の形状で作製するオーダーメイド耳栓になるために、基準となる耳栓本体の遮音量として最高遮音量を確保し、各音域帯の平均34dB、驚くことに8kヘルツでは45dBが確保出来ており、個人差も約±3~4dBという数値を実現しています。(これは米国の公的に確認されたマイケル&アソシエイト(Michael & Associates)心理音響学研究所の検査結果です。)
つまり市販の耳栓を装着した場合、その個人の実際の遮音量(実効遮音量)を推定するのが難しいのですが、ミュージシャンイヤプラグは治療の一環として使用する時には、経過を診断する際に、実際に装着者の遮音している音量を想定することができ、これによって診断の参考となることが期待できます。
聴覚に問題や不安を抱えている多くのミュージシャンの人々にとってこのミュージシャン外来の開設がひとつの光明となることでしょう。ただ大事なことは、演奏家や音楽を愛している人は、まずは音楽などでも大きな音量が危険であることを認識して過大な音量を避け、そして難聴など聴覚に問題が発生する前に予防のためにイヤプラグの装着を心がける人々が増える事かもしれません。
なお、仙塩利府病院でのミュージシャン外来の設立については、日本最大級の医療専用サイトのm3.com <エムスリー>や<日経メディカル>にも紹介されています。
「ミュージシャン外来」新設。音楽家の難聴早期発見を目指す‐小林俊光・仙塩利府病院耳鼻咽喉科・耳科手術センター長に聞く《エムスリー》
「当院でミュージシャン外来を設立した訳」小林俊光・仙塩利府病院耳鼻咽喉科・耳科手術センター長へのインタビュー《日経メディカル》
仙塩利府病院の医療法人寶樹会の広報誌でも小林俊光先生のミュージシャン外来について紹介されています。《せんえんだより》
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