世界保健機関WHOは2019年2月12日、かねてより警告していた若者の難聴問題を視野に、音量規制に関する初の国際基準を発表しました。
近年、スマートフォンを含むパーソナル・オーディオプレイヤーで大音量の音楽を長時間聴き続けることにより、若者が聴覚障害を起こす危険性が高まっています。WHOは2015年頃の段階で、世界の12~35歳の半数近くとなる11億人に難聴リスクがあると警鐘を鳴らしていましたが、2018年には世界ですでに4.6億人以上が聴覚障がい者であり、そのうち3,400万人が子どもであるという報告も。そんななか、WHOはおよそ2年のプロセスを経て、ITU(国際電気通信連合)と共同で音量規制に関する国際基準を策定し、2019年2月12日、「WHO-ITU基準」の発表に至ったのです。
主な内容は、難聴予防につながる音量基準の設定、音楽再生機器などにおける注意警告機能搭載のしくみについてで、安全な音量の目安として、大人は地下鉄の車内に相当する80デシベル、子どもは75デシベルを限度に、1週間に40時間までと設定。また、オーディオ機器には、実際にユーザーがどの程度の音量をどのくらいの時間聴いたかを追跡する機能や、ユーザー個々のリスニング習慣に基づいた安全評価の提示およびアドバイス機能、音量を自動で制限するオプション機能などを搭載し、安全なリスニングに関する情報とガイダンスなどもユーザーに提供すべきとしています。
この基準は、若者をメインターゲットに、娯楽施設などで音楽やその他の大音量にさらされている場合と、オーディオ機器を介して個人的に音楽を聴いている場合、両方でのリスニング習慣の改善を目指すWHO「Make Listening Safe」の主導で開発。
WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus博士は、「一度失った聴力は二度と戻ってこないことを若者たちは理解しなくてはならない。この新しいWHO-ITU基準は、若いユーザーが娯楽を享受していくときに、その危険を回避するために大いに役立つだろう」と語っています。
WHOは、政府とオーディオ機器メーカーが自主的に「WHO-ITU基準」を採用し、聴覚医療を促進する職業団体なども含め、ユーザーが聴覚障害から身を守る製品を求めるよう、この基準の擁護と安全なリスニング習慣の重要性に対する意識の向上に努めてほしいとしています。
https://www.who.int/news-room/detail/12-02-2019-new-who-itu-standard-aims-to-prevent-hearing-loss-among-1.1-billion-young-people
(参考:WHO HP/News)
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