ASHA(アメリカ言語聴覚協会)が聴覚士、言語聴覚士、言語聴覚士、言語聴覚士のために発信する公式の月刊ニュースマガジンのLeader Liveにマイケル・サントゥッチ博士の詳しいインタビューが掲載されました。記事では、シカゴのコロンビア大学で開催される「音楽誘発性聴覚障害に関するAES国際会議」(6月20日~22日)の開催と、音楽家の聴覚保護のクライアントとしての課題と利点の双方について論じています。
健常への回帰:聴力損失をともなうミュージシャンのための治療キャリア
オーディオロジストとしての経歴を語ってください。
私は1978年からオーディオロジストとして活動しています。 1985年にミュージシャンの難聴予防に焦点を当て始めました。その後、カスタムイヤプラグ(musician earplugsとして販売名中)から全く新しいプロダクトとなるインイヤーモニターという製品開発分野へと発展して、Sensaphonics社を設立しました。突然、私は図らずもメーカーになったのです。
そして1992年、私は最初のクライアントとして、かの有名なグレイトフル・デッドにIEMを装着しました。実際、彼らのサウンド・エンジニアであるデリク・フェザーストン(Derek Featherstone)と故ドン・ピアソン(Don Pearson)は、ステージ上でのミュージシャンの独特なオーディオ・ニーズについて多くのことを教えてくれました。これは重要なことで、聴覚学の講義で習うこととは全く次元が異なることです。
このイヤモニは、プラスチック製のIEMのSensaphonics ProPhonic IV。プラスチック製のシェルとソフトなチップを組み合わせたもので、世界で初めてBAドライバー(single drive)が搭載されたイヤホンでもある。広音域帯で最大26dBの遮音を実現している。その後、1996年にこれも世界初となるdual driverモデルの2XPへと進化しプリンスが最初のクライアントとなる。そして2001年に広音域帯で最大37dB,8000Hzでは45.5dBという世界最高の遮音性を実現したシリコンで作製されるイヤモニターの名機のSensaphonics 2XSの登場によって、これらの遮音性の低いプラスチック製のイヤモニはすべて生産中止となる。 |
私は、ミュージシャンが抱える聴力の問題について、“誰も話してくれなかったこと”や、“誰も取り上げてくれなかったこと”について、執筆、研究、指導を始めました。
当時、ロック・ミュージシャンのための聴力保護という考えは、ばかばかしいものと思われていました。大音量にすることこそが全てだったからです。今でも聴力を悪くして音楽を辞めていく人たちを見かけることがありますが、私たちは多くのことをしてきました。しかし、教育と自覚の面ではかなりの進歩がみられます。長い道のりでしたが、とても素晴らしいことです。
なぜ音楽に起因する聴覚障害に特化した会議の必要性を感じているのですか?
今回で3回目の開催となりました。私は3回とも議長または共同議長を務めてきました。オーディオ・エンジニアリング協会[AES]の会員は、オーディオを設計・制作する人たちです。それがレコーディングであれ、玩具であれ、ビデオゲームであれ、カーステレオであれ、携帯電話であれ、コンサートのステレオ・システムであれ、すべてオーディオ・エンジニアです。もちろん、これらの人たちは難聴予防について知っておく必要があります。
AES には 32 の技術委員会があります。聴覚・難聴予防の技術委員会を立ち上げたいと言ったところ、私は尋ねられました。「何故それに我々のメンバーが興味を持つのでしょうか?」
私は言いました。
「メンバー全員が空間音やカーオーディオに関心を持っている訳ではないが、全員が聴覚を気にしているはずだ。特に我々のためにオーディオをデザインしているのは彼らですからね。」ということで。こんな感じでスタートしました。
このプログラムは、素晴らしいゲスト・スピーカーを招いて魅力的なプログラムなので。とてもエキサイティングなものになると思います。
幅広いテーマを網羅していますね。どのセッションに特に興味がありますか?
多くの講演のテーマがありますが、中でもシボーン・マクギニティ(Siobhan McGinnity)とエリザベス・ビーチ(Elizabeth Beach)は、コンサートの音のレベル、オーディエンスからの“聴こえに対する”心構え・ミュージシャンからの反応についての興味深い研究をしています。素晴らしいプレゼンテーションになりそうですね。
基調講演はノースウェスタンの神経科医のニーナ・クラウス(Nina Kraus)です。彼女は脳と音楽を研究していて難聴による認知や認知の変化について話します。これらのことは私が音楽家に伝えていることで、実際には音楽家以外の人よりも(アーティストの)聴力が優れているということを伝えています。しかし、一旦聴力を失うと、初期の認知症になる可能性が200%も高くなるのです。ニーナの基調講演は会議全体のまさに論調となるでしょう。
あなたの会議に参加したオーディオロジストたちにどんな実践を望みいますか?
耳栓やインイヤーモニターがあるので、多くのオーディオロジストたちから「御社のディーラーになってインイヤーモニターやイヤプラグを売りたい!」と言われることが多いのですが、そういうとき、私は「いや、あなたが取り扱うのは聴力損失の予防ですよ」と言います。それはイヤプラグや商品を超えたものです。何故ならイヤプラグや製品を売ることは他の人でもできるからです。
我々のクリニックでは、ローカルやビックなミュージシャンをあわせて毎年約2,000人を見ています。聴覚を守る方法が学べる場所だからです。
私たちは商品を販売しています。と言っても商品を手にしない人が多いのです。今日は二人の方の聴力チェックをしました。
音楽界の大物(エリック・クラプトン、ロジャー・ダルトリー、ヒューイ・ルイス)が自身の聴力の問題について話すことで、彼らミュージシャンの聴覚ケアに対する意識が高まったのでしょうか?
これほどのミュージシャンのことですから、十分に長くプレイしていれば、そう、特に30年、40年、50年と続けてきた人たちは 暗記で曲を覚えています。
だから、彼らは言うでしょう。「私はこの曲を何万回と弾いています。私がやっていることを全部聞く必要はないんだ。指で音符を弾く方法を知っているから。リズムさえつかめれば、そしていくつかの合図をあれば………私は大丈夫です。ただちょっと面白いことや少し変わったことにも手を出せないけど、今は。」
「それができないのは、音が聞こえないからなんだ。」
「もちろん、音響過敏症や耳鳴りのひどい人もいますが、それはキャリアの終わりを悲惨なものにしてしまいます。 私たちは彼らを仕事に復帰させる方法を模索しています。」
伝説のミュージシャン、エリック・クラプトンが聴力を失いつつあるという。「耳が聞こえなくなり、耳鳴りがして、手が動かなくなってきている」と述べました。 |
ザ・フーのロジャー・ダルトリーが「とても、とても耳が聞こえない」と明かし、ライブでは「リップリーディング(読唇術)に頼っている」と述べました。 |
2018年残りのツアー日程をキャンセルし治療を始めたヒューイ・ルイスが聴力の異変に初めて気付いた瞬間のことを『TODAY』(5/7)で語っています。 |
聴覚保護の提唱者として、一般の人々が抱いている騒音性難聴に対する最大の誤解は何だと思いますか?
音がひずんでるように感じなければ、ダメージを与えるほどの歪みはないと思っています。しかし、それは真実ではありません。今日のPAシステムでは、コンサートの音量レベルは歪みなしで非常に大きくなることがあります。70年代には、ステージ上に積まれたスピーカーは105dB程度まで上がり、それ以上だと音が歪み始めました。今では、歪まずに130dBまで上げることができるようになりました。
一番の勘違いは、人は痛いほどうるさくて逃げたい音量は知っていても、耳にとって大き過ぎる・・・つまり危険レベルの標準音量を知らないということだと思います。基準がないからわからないんです。
彼らはショーに来て、サウンドレベルが95dBだとします。まあ、ライブでの音楽の場合は、それほどうるさくはないでしょう。しかし、2時間から4時間もその中にいると若干損傷することになります。しかし、彼らはそれを知らない。
そこで世界保健機関(WHO)の出番です。
世界保健機関は「Make Listening Safe」という取り組みを行っていますが、私たちはこの2年半の間、一般消費者向けのオーディオ機器メーカーとジュネーブで会議を行ってきました。その最終的な目標は、
「5%の確率で聴力を失う可能性があります」とか、
「10分後には定量限界になりますので、音量を下げてください」
といった警告を機器に表示することです。それは人々にどんな大きさの音量が過大になるのか参考になるでしょう。
音楽の会場はもっと何かすべきなのでしょうか?
ライブ・ネーションのために広大な野外会場に行くと、「このコンサートは、聴力を傷つけたり、聴力を損なうほどの音量になる可能性があります。耳栓は売店で購入できます。」とアナウンスが流れます。“問題がある”、“または問題があるかもしれない”と言っているのです。
この次に警告看板を出して欲しいです。
◆大きな音量は、聴力を傷つけます◆
◆赤信号が出たら耳栓をして下さい◆
◆バンドに音量を下げさせないで!◆
AC/DCを見に行っても、カーペンターズのような音になるとは思っていないでしょう!?
でも、それがあなたを痛めていることを知るべきです。
私は規制ではなく教育に賛成です。
キャリアのある音楽家を治療する場合、オーディオロジストは何を知っておくべきでしょうか?聴力検査の方法を変更する必要があるのでしょうか?
私の使っているカルテは2ページです。医学的なものと音楽的なものです。何年演奏していますか?どこに座っていますか?何種類の楽器を演奏しますか?などです。私は家族の病歴から聴力を損なう可能性のあるすべてのことについて話します。私は教育と動機付けに力を入れています。
《これが耳の仕組みであり、これが全ての研究であり、これがあなたの脳で何が起こっているか をです。》つまり耳に何が起こっているのか、何が安全で、何が安全でないのかを音楽家に教えています。
私たちはミュージシャンに、自分自身で良い判断をするための知識を与えたいと思っています。それこそがこの会議の目的です。
<To learn more about the 2018 AES International Conference on Music Induced Hearing Disorders and to register> 2018年AES国際音楽誘発性聴覚障害会議の詳細とお申し込みはこちらから。 click here.(エントリーは終了しています。)
Jillian Kornak is writer/editor for the ASHA Leader.
American Speech-Language-Hearing Association (ASHA) (アメリカ言語聴覚協会)
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本稿:英文
Leader Live recently spoke with audiologist Michael Santucci, founder and president of Sensaphonics, Inc., about his career treating musicians with hearing loss. On June 20-22, at Columbia College in Chicago, Santucci will present and act as co-chair at the 2018 Audio Engineering Society (AES) International Conference on Music-Induced Hearing Disorders.
Leader Live: Talk about your background as an audiologist.
Michael Santucci: I’ve been an audiologist since 1978. In 1985 I began to focus on hearing loss prevention for musicians, because nobody was helping them. Over time, I progressed from custom plugs into the new product area of in-ear monitors (IEMs) and founded Sensaphonics. Suddenly, I was a manufacturer. One thing led to another, and I fit my first famous clients, the Grateful Dead, with IEMs in 1992. In fact, it was their sound engineers, Derek Featherstone and the late Don Pearson, who taught me a lot about the specific audio needs of musicians on stage. That’s important, because it’s very different from what we learn in audiology school.
I started writing, researching and teaching about the issues that musicians have with their hearing that nobody talked about or addressed. Back then, the idea of hearing preservation for rock musicians was considered laughable, because it was all about being loud. Even today, you see all these people quitting because their hearing is so bad. But we’ve made a lot of progress in terms of education and awareness. It’s been a long road, but it’s pretty fantastic.
LL: Why do you feel there is a need for a conference specific to music-induced hearing disorders?
Santucci: This is the third time we’ve held this conference. I have been chair or co-chair of all three of them. The Audio Engineering Society [AES] members are people who design and produce audio. Whether it’s a recording, a toy, a videogame, your car stereo, your phone, concert stereo system, you name it, it’s all audio engineers. Obviously, these people need to know about hearing loss prevention.
AES has 32 different tech[nology] committees. When I said I’d like to start a tech committee on hearing and hearing loss prevention, I was asked, “Why would our members be interested?” I said, not all your members care about spatial audio or car audio, but they should all care about their hearing—especially since they’re the ones designing audio for the rest of us! So that’s how it started. It’s a really great program with great speakers and it’s going to be quite exciting.
LL: The program covers a wide range of topics. Which session are you particularly excited about?
Santucci: Siobhan McGinnity and Elizabeth Beach have some interesting studies on concert sound levels, attitudes [toward hearing] from audiences, and attitudes from musicians. That should be a great presentation!
Nina Kraus, a neurologist from Northwestern, is our keynote speaker. She studies the brain and music, and talks about cognition and cognitive changes with hearing loss. These are things that I tell musicians, like the fact that they’ve got the advantage of actually hearing better than non-musicians. But if you lose hearing, you have a 200-percent increased chance of early dementia. So Nina’s keynote will really set the tone for the whole conference.
LL: What conference takeaways do you hope your audiologist attendees could readily implement in their own practice?
Santucci: With earplugs and in-ear monitors, many audiologists say, “We want to be a dealer for your company and sell in-ear monitors and plugs!” and I say to them, “No, you want to sell hearing-loss prevention.” It goes beyond plugs and a product, because anyone can sell the plug and the product. I want them to come out of this [conference] saying that hearing loss prevention is complex, and if I gain expertise, people will come to see me because they’re concerned about their hearing, not because they want to buy a product.
We see about 2,000 musicians in our clinic here each year, both local and big-time. They come here because it’s a place to learn about how to save your hearing. We sell products, too, but a lot of them don’t get a product. Two people today were just checking their hearing.
LL: With big names in music (Eric Clapton, Roger Daltrey, Huey Lewis) speaking about their own hearing loss, do you think this has brought more awareness to musicians’ hearing?
Santucci: The thing about musicians is, if they play long enough, and especially those that have been doing it for 30, 40, 50 years, they know songs by rote. So they’ll say, “I play this song a million times. I don’t have to hear everything that I’m doing because I know how to finger the notes. As long as I get a rhythm, and I get a few cues I’m fine. Now I can never stretch it and do something fun or a little different. I can’t do that because I can’t hear it.” Then, of course, some have hypersensitivity and bad tinnitus—it just adds up to making a miserable end of career. We’re trying—and succeeding—in finding ways to get them back to work.
LL: As an advocate for hearing conservation, what would you say is the biggest misconception the general public has regarding noise-induced hearing loss?
Santucci: People think if the sound isn’t distorted, it isn’t as damaging as if it is distorted. And that’s not true. With today’s PA systems, concert levels can get up very high without distortion. In the ’70s, the speakers stacked on the stage got to about 105dB and then started to distort. Now, they can get up to 130dB without distortion.
I guess the biggest misconception is people know when it’s painfully loud and they want to get away, but people don’t know what the gauge is for too loud. They don’t know because there’s no reference. They show up at a show and the sound level is 95dB. Well for music at a live show, that’s not that loud. But if you’re in it for two to four hours, it’s going to do some injury. But they don’t know that.
That’s where the World Health Organization is coming in. They have an initiative called Make Listening Safe, and for the last two and a half years we’ve been meeting in Geneva with all the device manufacturers for consumers. The goal is to put warnings on the device to say, “Now you’ve got a 5-percent risk you’re going to lose your hearing,” or “In 10 minutes you’ve gone into complete dose, and you should turn it down.” It is going to start giving people that reference of what’s too loud.
LL: Should music venues be doing more?
Santucci: If you go to any big outdoor theater for Live Nation, they announce, “This concert could get loud enough to injure your hearing or damage your hearing. Ear plugs are available at the concession.” They’re already saying there’s an issue, or that there could be an issue. Now just put up a sign that says, “Loud sounds hurt your hearing. Put your earplugs in when the red light comes on.” But don’t make the band turn it down. You go to see AC/DC, you’re not expecting it to sound like The Carpenters! But you should know when it’s hurting you. I’m for education, not regulation.
LL: What should audiologists know if they are treating a career musician? Do they need to modify hearing screenings?
Santucci: I have a case history form that is two pages. It’s medical and musical. How many years have you played? Where do you sit? How many instruments do you play? I talk about family history and all the things that could damage their hearing. I [focus on] educating and motivating. “Here’s how the ear works, here’s all the research, here’s what’s happening to your brain.” It’s teaching musicians about what goes on with the ear, what’s safe, and what isn’t. We want to give them the knowledge to make good decisions for themselves. That’s what this conference is all about.
To learn more about the 2018 AES International Conference on Music Induced Hearing Disorders and to register, click here.
Jillian Kornak is writer/editor for the ASHA Leader. jkornak@asha.org.